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 2018/05/22 ホー・チ・ミンの漢詩
 
 今のベトナムという独立国を打ち立てる力となった故・ホー・チ・ミン氏 ( 漢字名:胡志明 )は、ベトナムが中国やフランスに翻弄されていた頃、ベトナム ( 越南 ) 方面の独立運動奔走中の1942年に、中国国民軍の地方軍閥政権によって囚われ、13か月間投獄された。
  
 その獄中で、100編を超える漢詩(絶句)を作っていた。
 
 ⇒出展 一海知義著・『知っているようで知らない漢字』1991年 講談社
  
 それらの中に、漢字というものを、実に巧みに使った拆字詩がある。とても感心したので、書き止めてみた。
  
 
囚人出去或爲國 ( 囚人出で去りゆかば、或いは國の爲にならん )
 
患過頭時始見忠 ( 患い頭を過ぐる時、始めてその忠が見える )
 
人有憂愁優點大 ( 人に憂愁のこころ有れば、優點は大になる )
 
籠開竹閂出眞龍 ( 籠の竹閂を開かば、眞の龍が出るであろう )
 
の枠の中からると、いはになるのだぞ
 
(中)を取り去()るめて誠の心()がえるのだぞ
 ・
の心に憂愁れば、その人のれたきくなるのだぞ
 ・檻(
)からのかんぬき()をけば、がおどりるぞ
   
囚-人+或=國  患-中=忠  人+憂=優  籠-竹=龍
  
 国民軍を皮肉り、かつ自分の決意を七言絶句に拆している。また音韻も見事に踏んでいる。これは表意・表音文字の形で文章をつづる漢字文化圏でないと、理解できない漢字遊びの詩であるう。
  
 中国で発達した漢字は、周辺各国に伝わったが、ベトナム( 越南 )でも使用されていたことは知らなった。現在、ペトナムと日本とは、東南アジアで最も相互理解の深い関係国だと言われている。