ブータン訪問記・8・考察

 ブータンから帰国して、自分の日記のつもりで延々と書き、駄物ながら写真を張り付けてきた。これでもかなりの文章と写真を削ってきたが、まだ長ったらしい。
 ブータンを単眼で見ると、以前の知識は非常に狭いものだとわかった。ヒマラヤ山麓の国として17世紀からたどると、チベットを統一したチベット仏教の一派、ダライ・ラマ
がシッキム地方を占拠したことと、ネパール、ブータン、インドが勢力を争っているところへ清国(中国)、ロシアが刺さり込んできた。
 そのため、イギリスが植民地としていたインド帝国をベースとした「インド領」として、ダージリン、カリンポン、シッキムをインドに統合した。そんな中で、ネパールとブータンだけが独立国として残った。

imgp9422-600_300釈迦の目( 記念用封筒から )

 今回行ってみて、「幸せを感じている国民の比率が世界一高い国」「幸せの国」という評判で、特に訪問した「ハ県」は国内でも最もその比率が高いという。ただし、経済的には最貧国の一つであり、私は、彼らの感ずる「幸せ」とは何かを把握したかった。
 国内の全人口が70万人弱で、そのうちの10万人が首都のティンプーに集まっているという。主産業は農業と畜産業であり、他に絹や木綿の製糸・織物が主なものとだけ聞いて行ったが、それが正しいかどうかは理解できなかった。
 ただ、ヒマラヤ山脈からの豊富な水量を活かした水力発電量は非常に貴重で、電力はインドへ輸出しており、その金額は総輸出額の4分の1以上を占めているという。それも、国内が豊かになり、消費電力量が急増すると、貿易とのバランスが困難にならないか。
 当然、首都ティンプーの住民がすべて農民であるわけはなく、王族や議員、役人などの他に商業や交通に携わっている人々も多い。その中に格差はないのだろうか。
 帰国してから、ネットで調べてみると、現実には国民総幸福量(GNH)の向上を国是とし、GDPはGNHを高めるための四つの手段のうちの一つ(四番目)のようだ。そしてGNHの数値としては、2010年で日本の6.6
を下回る6.1であるとか。
 2005年には、ブータンで初の国勢調査が行われた。アンケート項目は数百に及ぶが、中で特徴的なものは次のようなものであった。

・【満足度】自分で幸せだと思うか、幸せになるにはどのようなことが必要か?
・【精神面】自分自身がスピリチュアルだと思うか?お祈りや瞑想をするか?
・【自殺について】自殺を考えたことがあるか?実行しようとしたことがあるか?
・【環境に関する教養】身近な植物の種に関する知識、水路のメンテナンスが重要だと
  思うか、自分で植林をするか。
・【Cultural literacy】地域の祭り、祭りの意味、祭りで行われるダンスや歌の意味の
  知識について
・【信用感】ブータン人/近所の住人をどれだけ信用しているか?
 ただし2005年の調査で用いられたアンケート項目には不備も指摘されている。例えば本調査の中の「あなたは今幸せか」という問いに対して97%が幸福と答えた、との引用がなされることが多い。しかし、このアンケートは「非常に幸福 (very happy)」「幸福 (happy)」「非常に幸福とはいえない (not very happy)」の3択で、回答の集まりやすい中間の選択肢が偏ったものになっており、また「どちらでもない」といった選択肢が用意されていないものであった。2010年からは世界的に11段階評価の調査に改められた。
 2015年には、国によって判定の基準や、対象数に若干ばらつきはあるものの、GNHの1位はスイス、2位はアイスランド、3位はデンマークときて、15位にアメリカ、26位にドイツ、日本は46位、イタリアが50位で、ブータンは131位という驚くべき結果である。

 今回は、ブータンが観光立国・環境立国をしていこうとするための、地域別特徴を生かした観光客向け土産物を試作し、指導していこうというJEEFのNGO活動と、ブータンのHVC(Haa Valley Cooperative=ハ谷協同組合)との協力体制に、私達も首を突っ込んだことになる。
 その後ブータン側は、日本の大分県で始まった一村一品運動を参考にした具体策として、「ハ県」に道の駅(ビジターセンター)の第1号を作ることを具体化することに決めた。そのための東京でのサポート会議に私達にもできれば出席してほしいとのこと。やむなく10月末に辻堂で予定していた別の用事を10月14日に繰り上げて、15日のその会議に参加することにして、スケジュールを組みなおした。

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ブータン訪問記・8・考察 への2件のフィードバック

  1.  安成 純一 のコメント:

    こんにちは!  安成です、毎回欠かさず 「北国から」を拝見して、札幌の
     様子を感じとっています。ブータンの旅も連載が終わりましたね。
     
     私は今月の7日で、後期高齢者(75歳)になります、ほとんど毎日、設計事務所
     に出向き業務をこなしています(監理建築士として)、そろそろ、引きぎはかとは
     思いますが、・・・・・ ところで、10/14,15と上京するようですね、会える時間は
     とれますか? スケジュールはタイトのようですが。
      「北国から」で徳さんと奥さんの様子が見ることができて、楽しみにしています。

    • dad のコメント:

      安 さん、ご無沙汰しました。明日から「後期」とか。私もいずれ追いかけます。頭の中はまだまだ「前期」にも届いていないつもりですが、体は着実に「前期」に入り込んでいるようです。
      妻や子供たちにも、私の(つもり)は全否定されます。確かに何かを言葉で表現しようとすると、あとから自分で考えても「くどい!」と感じる時があります。ブログを見ても分かるでしょう?
      拙文を見て頂いているとのこと。ありがとうございます。自分の備忘録のつもりで書いていますが、どこか意識の底で「カッコ悪くは書けねーな」という思いもあるのは事実です。
      上京の件については、メールでご連絡しましょう。  お元気で。

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