利尻・礼文の初夏-1

01-Douhoku-Chizu

 毎年尾瀬を歩くグループの仲間で、11年目の今年も6月に尾瀬湿原を歩いてきた。今年はこの仲間の提案で、尾瀬とは別に北海道の北端、利尻島と礼文島を歩いてこようということになった。

7月7日(水)
 集合時間の11時30分には、参加予定の16名全員が羽田空港に集合した。飛行機の便はANA 573便・12時40分発。
 稚内空港には定刻の14時25分に到着。空港ビルの前の駐車場を囲む生垣では、ハマナスが真っ赤な花を咲かせており、久しぶりに目にして、何かとてもなつかしい気持ちになった。
 私達の長女の夫君の実家がこの稚内である。利尻・礼文からの帰りにお邪魔すると伝えておいたが、思いがけず空港にご両親が見えていて、久しぶりにお会い出来て、車でフェリーターミナルまで送っていただいた。

02-Wakkanaikou稚内港北防波堤ドーム

 港の北側には独特のデザインの防風・防波堤が聳えていて、景色を区切っている。ここから利尻島へ向かうが、フェリーが宗谷海峡へ出ても、近くにあるはずの利尻島には厚い雲がかぶっていて全く見えない。
 フェリーが外洋に出ると、船客が船上から投げるエビセンを目当てに、多数のウミネコが追ってくる。利尻島・鴛泊(おしどまり)港の岸壁では、オオセグロカモメ、スズメ、ハシブトガラスが見られた。
 鴛泊港には旅館「しばた」のマイクロバスが迎えに来ていて、10分ほどで高台の旅館に着く。夕食は海産物づくしで、北海道の名産品がひととおり少しずつ出てきてけつこうぜいたくである。寝室は男性6名が1室、女性10名が3室に分かれた。

03-Otatomarinumaオタトマリ沼のスイレン

7月8日(木)
 朝の気温13℃。ここ数日は最高でも20℃程度とか。暑熱地獄の関東地方からは考えられない涼しさである。普通の旅館料理よりかなりにぎやかでボリュームのある朝食を済ませて旅館を出ると、鴛泊港から島を一周する定期観光バスに乗った。
 出発して間もなく、少し山中に入ったところにある姫沼に寄る。一周800メートルをゆっくりと歩くと、途中に湧き水があって、ガイドさんが「この島にはイヌ科の野生動物が居ないので、飲めるんですよ」と言っているが、絶対にエキノコックスはないのか?ちょっと気味が悪い。
 姫沼の湖面に、コガモが3羽浮かんでいた。周りの森からはコマドリ、ミソサザイ、ヒバリ、ウグイスの鳴き声がしきりで、ほかにオオジュリンやクマゲラと思われる声も耳にした。一周路が終わる頃、湖面の向こうの空の雲が切れて、一瞬利尻富士の頂上が顔を覗かせた。
 この利尻富士は、地元でもそう頻繁に見える山ではないと言う。この日も低い山裾まで雲が垂れ込めていたが、島をバスで回っている間に何度も雲が切れて、険しい表情の頂上を目にする事が出来た。
 その後オタトマリ沼付近で見聞きした鳥は、コマドリ、ハシボソガラス、ハクセキレイ、ウグイスであった。また湖畔にアヤメ(紫と黄色の2種)が咲いていた。駐車場横の売店でバスガイドの推奨していた『クマザサソフト』を見つけ、1つ買って妻と舐めてみた。少し青臭かったが、これが結構新鮮で、美味であった。
 その後見返台園地でノゴマのような声を聞き、リシリヒナゲシの可憐な花を楽しんで、島を3/4周したバスを沓形港で降りた。ここでまたフェリーに乗って、礼文島の香深港に渡る。

04-Ezonyuu+Rishirifuji エゾニュウの花と利尻富士(礼文島・元地灯台付近より)

 香深港には予定よりもかなり早く到着したので、礼文島南部の桃岩林道を歩こうと衆議一決し、宿泊予定のホテル”はなれぶん”に荷物を預けて、乗り合いバスで南端の知床(しれとこ)まで行った。ここから元地(もとち)灯台までの緩やかな登り道をゆっくりと登る。なだらかな斜面をたどる道の両側には、色々の花が咲いている。なかでもエゾニュウの大振りな花は、海の向こうの利尻富士と高さを競うようで、見事である。
 元地灯台のそばの高台で、薄くモヤのかかった三方の日本海を眺めた。西側の崖下に飛ぶオオセグロカモメやウミウを遠望し、近くの斜面でハクセキレイ、スズメ、ハシブトガラスが遊ぶのを見た。私がこの6月に痛めた左膝が完治しておらず、この山道で少し痛みを覚えたので、大事を取って妻とともに引き返した。グループのほかの人たちは、灯台から桃岩歩道に入り、桃岩経由で香深港へ降りるコースに入っていった。
 知床まで下ってくると、香深港まで戻るバスまで2時間近くあった。歩いても1時間程なので、妻と「やっくり歩こうか」と話していると、一足先に下山していた年配のご夫婦が「いま、宿の車を呼んだから、ご一緒にどうですか」と声をかけてくれた。またやってきた車の運転手さんが「どうぞどうぞ」と言うので、香深港まで載せていただいた。感謝。

05-Motochi-Rebunkou 元地灯台から礼文港を望む

 7月9日(金)
 ホテルの東向きの窓からは、小雨模様の港が良く見える。目の前に見える利尻島や宗谷岬のやや北よりの空に陽が昇ってきたのか、水平線のあたりがぼんやりとオレンジ色の帯を敷いたようになる。
 この香深港の後ろの山には高山植物が多く、特に礼文林道の途中には、エーデルワイスの一種であるレブンウスユキソウの群生地がある。そして毎日、朝食前に希望者をマイクロバスでこの群生地に案内してくれる。勿論私達は参加した。山の尾根近くなると、エゾカワラナデシコやアサギリソウ、イワベンケイ、チシマアザミなど、色々の花を窓の両側に見る事が出来る。マイクロバスの終点から少し歩くと、やや小ぶりで可憐なレブンウスユキソウの見事な群生地があった。

06-Rebunnusuyukisouレブンウスユキソウとその群生地

 朝食後、二手に分かれ、私達はこの礼文島の主な場所を巡る観光バスに乗る。静かな水を湛える久種湖(くしゅこ)を通り、澄海岬(すかいみさき)から日本海を望む。昨日の元地もそうだが、島の西側は切り立った崖が続いて道はなく、高い所から海を眺める展望場所が多い。
 この澄海岬周辺の斜面には、エゾカンゾウ、リシリヒナゲシ、イワベンケイその他の花が咲いていた。すぐ近くにはレブンアツモリソウの保護地がある。花期は6月上旬で、いまは閉鎖されている。

07-Sukai-Misaki澄海(すかい)岬

 バスは澄海岬から東岸に下り、スコトン岬の手前へ。ここで降りて岬までを歩いていくと、先行してハイキング中の別働隊とすれ違った。岬の先端まで行くと、そのさらに北方に、やや平らな海馬(トド)島がある。この島よりも、宗谷岬の方がさらに北に位置しているそうである。
 岬そばの売店に”こんぶソフト”という看板を見つけて、ヤジウマ根性で買ってみた。舐めてみると確かに昆布だしの味がして、私はまぁまぁいい味だと思ったのだが、妻は一口舐めただけで、「ソフトクリームにあるまじき味」として、残りは私が消化することとなった。
 岬から車道に戻り、久種湖畔のキャンプ場前でバスを捨てる。ここから湖畔に沿ってバードウオッチングを始めるが、今まで島内の他でも見聞きできた鳥が多かった。湖畔を外れてからの草原では、コヨシキリがさかんに鳴くのが聞こえた。

08-Oohanaudo+Todojima礼文島・スコトン岬から海馬(とど)島を望む.手前はオオハナウドの花

  久種湖畔から船泊に出て定期バスで宿へ帰るつもりでいたが、私が道を間違えてエリア峠の方に向かってしまったため、途中の峠そばの高山植物園に入って休憩した。ここでは、保護植物の増殖もしており、花は終っていたがレブンアツモリソウの株をたくさん見る事が出来た。ここから上泊に降りて、迎えの車で宿に帰った。

09-Kouzan-Shokubutsuen 高山植物園前の斜面に咲くエゾタンポポの群れ

※ 以下、「利尻・礼文の初夏-2」に続く

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