◆ 5月20日、朝日新聞の朝刊に、「ヒマラヤの空?青いケシ咲く」という記事が載った。ヒマラヤの標高4,000メートル前後で咲く青いケシを北海道で栽培に成功したということを聞いていたが、それがすぐ近くの箱根でも咲いているというので、朝から車で出かけた。目的地は箱根の湿生花園である。
◆ ここは以前から、私達の箱根仙石原のバードウオッチングコースの終点になっていたが、湿生花園に入ったことはなかった。正月の大学箱根駅伝と同じコースを順調に走り、湿生花園に着いたのはまだ11時前であった。駐車場で車から降りるとウグイスとコゲラの鳴き声が聞こえてきた。湿生花園の中に入ると、名前のとおりの湿地性植物だけでなく、標高650メートルにあるために、北方系や山地性の植物も集められているようである。今日の目的である青いケシは、入ってすぐの植え込みの後ろに咲いていた。
箱根湿生花園の青いケシ(一重)
◆ ヒマラヤ、チベットなどアジア中央部の、標高3,000~4,000メートルの高地に9種類分布し、1913年にイギリスの探検家が発見するまでは、世界に一般的には知られていなかった。これらはヒマラヤの青いケシ」と呼ばれ、そのうちの2種類が日本で栽培されているという。
◆ 夏の暑さには弱いので、北海道や長野県等の寒冷地で育てられ、この箱根には苗の状態で運ばれてきたようである。ここでは、種子を取って発芽させる実験を行うそうである。これらはケシ科メコノプシス属に分類され、日本ではベトニキフォリアとグランディスの2種類が栽培されている。
青いケシ(二重) 青くないケシ
◆ 青いものはその青さから「ヒマラヤの空の色を写している」と評されているが、ここでは「箱根の青い空」と表現したいと書かれていた。花が一重のものと二重のものが10数株咲いている端っこに、上右のようなピンクと淡い紫色のケシが1株ずつひっそりと咲いていて、見物客はあまり興味を示していないようであった。しかし私達は、そちらの不思議な色合いにも興味を持った。野生植物を栽培すると、色合いその他色々の突然変異が現れると聞いているが、この2種のものがそれなのかどうかは、確認できなかった。
キンラン ハマナス
◆ 場内には前述したように中・北部の植物も多く、キンランやハマナスなども咲いていた。キンランは神奈川県北部の探鳥フィールドでもまれに見られるが、うっかり公開するとたちまち掘り取られてなくなってしまうので、仲間だけでひっそりと楽しむことにしている。ここの入り口にあるセンターでは、色々の山野草を鉢に入れて販売している。栽培して、増やして販売しているとは思うのだが、気象条件の異なるところへ持っていっても育つ確率は低いのだから、売るべきではないと思っている。
クロユリ 白いコマクサ
◆ 先ほどのハマナス(別称ハマナシのほかに、クロユリやコマクサなど北海道でなじんできた花に出会えたのは嬉しかった。中でもコマクサの花は紅紫色が普通なのに、ここでは1株だけ真っ白のものがあった。
◆ この湿生花園を歩いているとき、時々オオヨシキリやコジュケイ、キジなどの鳴き声を聴くことができた。リュウキンカやコウホネ、スイレンなど湿地の代表的な花が咲いていた。またミズバショウは花が終わり、葉が育ってそれこそバショウが大きく手を拡げたようになっていた。