旧友逝く

 私が高校1年のとき虚弱な体を鍛えたくて、学校の中庭にある鉄棒に毎日ぶら下がっていた。その隣で、いつもやってきては簡単に大車輪でぐるぐる回っている男が居た。それが別のクラスのFであり、いつしか私とFとは話し合うようになった。Fは中学時代に体操をやっていたのだが、我々の高校には体操部がなかった。
 そのうちに5人ほどがいつも集まるようになり、体育の教師とも話し合って体操同好会を設立した。2年目からその教師を顧問に迎え正式に体操部として発足した。床運動用マット、鉄棒、平行棒、吊環は体育館に揃っていたが、鞍馬(兼)跳馬の器械を購入してもらったことで、体操競技の全てを練習できるようになり、市内の競技会にも出場するようになった。私は鞍馬がまったくダメだったが、Fは何でもこなし、常に上位に食い込んでいた。

Mr_furuuchi-blind 高校時代のFの雄姿

 高校を卒業して、私が関東へ転居したために疎遠になっていた。私がユーターンして来て、昨年秋の同期会で久しぶりに顔を会わせ旧交を温めたが、何となく元気がないように感じていた。10日ほど前、Fが市内の南部地域の少年野球チームの会長をしていることを知って、他の用もあったので、彼の経営するスポーツショップへ妻と行ってきた。しかしその時は出かけているということで、メモ用紙に名前と電話番号を書き、連絡をくれるようにと店員に頼んできた。ところがその後、何の音沙汰もないので、不審に思っていた。

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 けさ、妻が新聞の死亡公告を見ていて、私に知らせに来た。Fが5日に亡くなったのである。今夜が通夜だったので、式場へ行ってきた。故人の経歴の紹介の時、Fが1年前に肺癌に侵され、放射線治療によって一時全治したかに見えるまで回復したが、この8月に再発して急速に衰弱したとのこと。私が彼の店を訪ねた頃はまだ意識がしっかりしていたようなので、あのとき店員が正直におしえてくれれば、見舞いにも行けたのにと残念でならない。

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