初夏の尾瀬でバードリスニング-3

6月5日(土)
 仲間はみな同期生だから、年齢も近いし還暦も過ぎている。朝も4時をまわって仄明るくなると、誰彼となく起きだしてもぞもぞと着替えを始める。6時の朝食までは間があるので、小屋の外に出てみる。ずっと西の至仏山と下の湿原との間に朝霧が流れ、至仏山の左肩に満月に近い月が近づく。山体に朝日が射しはじめると、霧は少しずつ消えていく。湿原の方でふとカイツブリが鳴いた。
 7時、全員がお弁当におにぎりを包んでもらって出発。きょうも抜けるような青空である。山小屋の近くではイワツバメ、ニュウナイスズメ、キセキレイが飛び、カッコウ、ホトトギス、アカゲラが鳴く。

14_15-Morning-Shibutsu_Mizubashou     朝日のあたる至仏山            ミズバショウ

  見晴から湿原の東端を燧ケ岳を右に見ながら北上する。こちらのほうが、湿原中央部よりミズバショウが多い。ほかにギョウジャニンニク、コバイケイソウが目立つが、これは昨日も多く目にしている。
 温泉小屋の近くから樹林帯に入るが、ウグイス、メボソムシクイ、コゲラが鳴き出し、カッコウやホトトギスも混じる。湿原の中ではもう盛りを過ぎて色あせていたショウジョウバカマが、この林の中ではきれいなピンク色を保って咲いている。

16_17-OnsenGoya_Shoujoubakama 温泉小屋付近の湿原           ショウジョウバカマ

 三条の滝への分岐点を過ぎるとさらに山深くなり、まわりではエゾハルゼミがにぎやかに合唱を始めた。尾根に上がり、谷へ下りして燧ケ岳の北麓を巻いていくと、足元ではツバメオモトやエンレイソウが花をつけ、センダイムシクイやエゾムシクイ、そしてコルリやコマドリが疲れを癒やしてくれる。沢の近くではミソサザイが軽妙にさえずり、ヒガラ、シジュウカラが時折顔を見せてくれた。

18_19-TsubameOmoto_Enreisouツバメオモト              エンレイソウ

 同行した仲間は、半分以上が初めて尾瀬を訪ねたという。湿原中央部の木道はともかくとして、燧裏のこんな所にまで桟道や階段など、延々と整備してあることに感嘆の声を上げていた。私達も、彼らの素直な感想を聞いて、改めてこの地道な努力の結果を思い知らされた。
 さらに山道を進んでいくと、変った植物に出会う。アップダウンが少なくなり、時折ポカッと小さな湿原が現れ、やがて御池(みいけ)の休憩所が見えてきた。ここまで来ると、セグロセキレイ、キセキレイ、キジバトなどが現れて、里の近くへ下りてきたなと実感した。

20_21-Togakushishouma_Tsukubanesou トガクシショウマ             ツクバネソウ__

 御池の休憩所の手前で弁当を食べた。御池までは貸切バスは入れないとかで、会津バスで桧枝岐村まで下り、昨日から待っていた我々のバスに乗り換え、少し下った所にある桧枝岐温泉に立ち寄って汗を流した。あとはバスに揺られて会津高原・塩原温泉を経由して西那須野で東北自動車道に入り、順調に走って新宿に着いたのは予定より1時間早い18時過ぎであった。

※ 帰宅した翌朝の朝刊を見て仰天した。「尾瀬ヶ原でクマに襲われ2人重傷」とある。詳しく見ると、「昨日の朝8時半頃、湿原北部の東電小屋付近で」とある。私達はそのほぼ1時間前に、その小屋に通ずる分岐点を歩いていたのであった。5年前にもほぼ同じところで夫婦が襲われてケガをしている。

 人が居ることを音や声で事前に知らせておくと、クマの方から避けるそうである。今回は妻一人だけがクマ避けのスズを着けていたが、次回は私はじめ多くの人にスズを着けてもらわねば。

※ 参考リンク ⇒ 「秋の尾瀬湿原を歩く(2003.10)」

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