焼尻島(やぎしりとう)

 未明から結構な雨降りで、宿の窓から見える港は濡れて暗く、打ち沈んでいた。きょうはゆっくりと島内を歩き回るつもりであったが、この雨では致し方ない。朝食を摂りながら、どうせ雨の中を歩くのなら隣の焼尻島に行ってみようということになった。
 きのう乗ってきた高速フェリーが、羽幌と焼尻・天売の間を一日2往復している。これには車は積まない。そして車を積む普通フェリーが2往復ある。きょうは9時40分発の高速フェリーに乗って15分、焼尻島に着いた。
 雨が止まないので、港に待機していた観光タクシーに乗る。ワンボックスの車に客を乗せて、島内を1時間あまりで案内する。昭和20年生まれという陽気な運転手は、植物について勉強しているようで、いろいろと説明してくれた。

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 天売島と焼尻島とは、対岸・北海道の羽幌町の南、暑寒別岳(しょかんべつだけ)付近を含めて「暑寒別 天売 焼尻 国定公園」に指定されている。この焼尻島は、港付近には人の植えたオンコ(イチイ)の樹があるが、山林の中には樹齢400年を超える天然のオンコがたくさん自生している。オンコも年を取ると樹皮がむけて磨いたように艶やかになる。ただ冬に吹き付ける北西の季節風や雪の重みなどによって、どれもがかなり変形しており、その樹形から主なものひとつひとつに名前が付けられている。

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 この島では、食肉専用のひつじ、サフォーク種が400頭ほど飼育されている。頭部と肢が黒い独特の色をしている。羊毛も採れるが、繊維が弱くあまり実用的ではないそうだ。

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 文化5年(1808年)、当時樺太方面の北方警備に当たっていた会津藩の船が台風で難破し、内2名の遺体がこの島に流れ着いた。島民が手厚く葬ったが、会津の人々が今でも毎年墓守と慰霊のために訪れるそうである。そんな慰霊碑や墓が、より北方の稚内市と利尻島にも建立されているそうだ。
 1時間ほどの案内を受けて港へ戻り、この島で唯一サフォーク羊を食べられる店に寄った。七輪の炭火の上に網を載せて自分で焼くのであるが、羊肉のぶつ切り150グラムほどと、ピーマン1個、タマネギの輪切り2個がついて1人前3,000円は、稀少種のサフォークだとは言っても、ひどく高いと感じた。ただし味や歯ごたえには不満はなかった。

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 食事を済ませて雨空を眺めていると、午前中に世話になった観光タクシーの運転手が、この島唯一の喫茶店まで車で連れて行ってくれた。喫茶店のオーナーは50歳台前半の女性で、つい4年ほど前まで横浜のみなとみらい地区ででインテリアコーディネーターをしていたそうである。今はここで軽食喫茶店を経営するかたわら、島の祭りのコーディネート・サポーターをしているようだ。コーヒーをよばれ、そのオーナーのすすめで、車の入れない散歩道をゆっくりと歩いてきた。

DSC04670-540+360 普通フェリー、”おろろん2号”

 港に戻って、今度は高速でない普通便のフェリーで天売島に戻った。このフェリーは所用25分だった。天売島に戻る頃にやっと雨があがり、宿の窓からはるか北方の利尻島の主峰・利尻富士が見えた。

DSC04678-540+360 宿からほぼ北方を望む.右手に、利尻富士( 7月11日 19時22分 )

出会った鳥
ウミネコ、オオセグロカモメ、ウミウ、ウトウ、コムクドリ、カワラヒワ、ノゴマ、アオジ、ウグイス、ハクセキレイ、スズメ、ハシブトガラス
所用費用
天売→焼尻 高速フェリー 1,340円/人   観光タクシー(約70分) 1,300円/人
サフォーク種焼肉 3,000円/人 ブレンドコーヒー 400円/人
焼尻→天売 一般フェリー2等 760円/人  宿(1泊2食6畳和室2名) 7,350円/人

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