◆ 私は中学生のころ、昆虫採集に夢中で、特にゾウムシやカメムシに興味をそそられていた。当時「子供の科学」という雑誌の読者欄に、「ゾウムシとカメムシの標本交換をしたい」と掲載してもらったところ、全国から50件ほどの連絡がきた。そしてそのほとんどが、「チョウ」または「その他の昆虫」の交換を求めるもので、肝心の、「ゾウムシやカメムシ」については1名だけであった。またほぼ全てがはじめからチョウなどの標本を送りつけてきて、「北海道のチョウの標本を送ってほしい」という手紙が添えられていた。
◆ 北海道はチョウの世界では特異な分布を示しており、要望する気持ちはよく分かるが、私はほとんど採集しておらず在庫もない。仕方がないので、そっくり包みなおして「採集していないので」と手紙を添えて送り返した。そのうちの数名からは、こちらを非難する手紙がきて、心外に思ったものである。
チャバネアオカメムシ(10mm) マダラナガカメムシ(13mm)
◆ そんな経緯はともかく、いまでもゾウムシやカメムシについては関心がある。しかし以前のような採集・殺戮はやめて、もっぱら写真での採集をしようとしている。先日積丹半島を歩いた時に、2種のカメムシを撮影した。どちらも北海道ではごく普通に分布している。マダラナガカメムシは、ある秋の初雪が降るころ、藻岩山にある寺院の手摺石のつなぎ目の隙間に、1,000匹以上の群れで越冬しているのに出くわしたことがある。