マレーシア探鳥記 (5) フレーザーズヒル ・3

3月5日(水)
 このフレーザーズヒルに到着した夜、バスで走っているあいだ雨が降っていたが、到着してからずっと雨が降らない。今頃は、夕方から夜にかけて一度は雨がざっと降るのが普通なのだそうだ。雨に遭遇しないことを喜んでいたら、チン・ホックさんが「雨が降らないために、普通なら雨の後に出てくる鳥がなかなか出てこない」と、ぼやいているとか。なるほどそういうこともあるのか、と妙に感心した。
 今日も7時にバスで出発。少し下った所で、太さ60~70センチ、長さ9メートルほどの大木が折れて、道路の殆どをふさいでいる。バスがギリギリですり抜けたが、倒木に少し車体をこすったようだ。ところどころで降りては鳥を探し、セアオエンビシキチョウ、ミヤマヒメアオヒタキ、ノドフサザイチメドリ、ズグロゴジュウカラ、ノドジロオウギビタキ、キセキレイなどに出会う。
 宿舎への帰り道、先ほどの倒木がそのままになっているので、全員がバスを降りてこの倒木の移動に一汗流す。多分1トン以上はあったであろうこの大木は、はじめはびくともしなかったが、皆の息が合ってくると少しずつ移動し、5分ほど後には路肩に寄せることができた。皆さん、朝飯前の重労働、ご苦労様でした!!

01-ToubokuIdou  倒木の移動 左端がチン・ホックさん  Photo by Miss M.H

 10時に朝食にありつく。毎朝起き抜けで探鳥に出かけて歩き回り、胃腸が十分めざめてから朝食になるので、やや量の多い朝食もおいしく、そこへ持ってきて例のチリソースである。あっという間に食べてしまう。
 さていよいよこのフレーザーズヒルを下りるときが来た。朝食を済ませ、各自荷物をまとめにかかる。3泊した部屋に別れを告げ、建物の外へ出て歩き回ってみる。この宿舎をベースにしてあちこちへ出歩いたのだが、宿舎の周囲ではあまりゆっくりとは探鳥しなかった。今度来るときがあったら2~3日この宿舎に居続けて、鳥が1日にどのように現れるか、じっくりと待ってみたいと思った。

02_03-Kanban_Shukusha                         門 柱                フェルダ・フレーザーズヒル・リゾート全景

 11時過ぎに宿舎を出発し、フレーザーズヒルの中心地に。バスを降りると、目の前にゴルフ場が拡がっている。谷間をうまく利用しているとはいえ、こんな山の中にゴルフ場が!と少々驚いた。グリーンの上をマミジロタヒバリが歩いている。上空にはシロハラアナツバメが飛び交い、周囲の樹木にタテジマクモカリドリが止まっている。
◆ この開けたグリーンの端部にレストランがあり、その2階にWWF(世界野生生物基金)の事務所があるので、図鑑や絵葉書等が買えるかと期待して上がったが、残念ながら事務所は(休憩中)とかで閉鎖されていた。外へ出てみると、この建物とゴルフコースの間にあるブラシノキの花にアカハラコノハドリなどが来て花の蜜を吸っていた。
広場を隔てた商店に行くと、皆がほれ込んだ例のチリソースの瓶詰めを売っていた。
 またパンに塗ったら美味しいだろうと思われるココナッツバターも売っていた。買って帰りたいところである。

04_05_06-AkaharaKonoha_FlowerV_FlowerW           アカハラコノハドリ                 紫 の 花                白 い 小 花
      Photo by Dr.S.Isoe                          Photo by DAD

 12時ちょうどにゲートが開くのを待って、ギャップへと下る。昨日昼食を摂ったレストランの前で、チン・ホックさんがクロガビチョウの声を聞きつけて、「待ち」の体勢に入る。そのレストラン前のがけ下の枯れた竹の幹に、DADが夢にまで見たマレーゼミが止まっているではないか!黒い体に真っ赤な眼。羽は上半分が鮮やかな緑で下半分は黒。私の息子が子供の頃に買い与えた「世界の昆虫」という図鑑に掲載されていて、いつかは生きている現物を見てみたいと思っていただけに、こんな形で簡単に会えるとは思ってもいなかった。じっとして動かず鳴きもしないが、しみじみと眺めた。

 頭上にはヒイロサンショウクイがその鮮やかで優雅な姿を見せ、続いてロクショウヒタキがその不思議な青い姿を見せた。下の薮では昨日見たような大きなクモの巣に緑色のセミが引っかかって、すでにクモの糸に巻かれ ていた。このセミは、大きさはツクツクホウシ程度なのに、その鳴き声たるやチェーンソーで丸太を切っているような「音」を出す。昨夜フレーザーズヒルの食堂に飛び込んできて、何度外へ放り出しても戻ってくる。捕まえるたびに「ギーギー」とすごいわめき声であった。

07_08_09-MalaySemi_Hiirosanshoukui_Spider                    マレーゼミ                  ヒイロサンショウクイ       セミを捕えたクモ
   Photo by Dr. S.Isoe                      Photo by DAD

 山を下るバスの中から、チン・ホックさんがカオグロクマタカの巣と、その上に居る1羽の雛を発見。バスを止めて望遠鏡でじっくりと見る。さらに下る途中で、チン・ホックさんの知り合いのバードガイドに出会って、カオグロクマタカの巣の情報を伝えていた。インドのバードウオッチャーが1人でこのガイドを雇い、車で探鳥して歩いているという。超贅沢なバードウオッチング・ツァーである。我々も、こんなツァーをやってみたいねと、妻とため息をつく。
 すこし下ったところで、上空をカオグロクマタカが旋回していた。先ほどの巣の親鳥であろうか。チン・ホックさんがはじめに「見せる」と約束したサイチョウの仲間がなかなか現れず、途中何度も車を止めさせて探してくれたが、とうとう今回は発見できなかった。飛行機の時間もあるのでハチクマに出会ったのを最後に一気にクアラルンプールまでバスを飛ばす。

10_11_12-KinRanPoinsetia_BengalWildCat                 黄色のミニラン     ポインセチア?の花    べンガルヤマネコ幼獣

 サイチョウに出会えなかったのがチン・ホックさんの負い目だったのか、最後のチャンスとして空港の近くでヨタカを探すという。空港の滑走路増設計画地なのか、真っ暗な造成地に入っていく。思った場所ではなかなかヨタカが現れず、なかばあきらめて国道へ出ようと方向を変えたとき、仮設道路の中央で何かがもぞもぞと動いている。
 車のライトと懐中電灯とで照らしてみると、なんとベンガルヤマネコの幼獣3頭が、かたまって不安そうにこちらを見ている。イエネコより一回り大きいだろうか。足はかなり太い。しばらくもぞもぞしていて、親が呼んだのか道路わきの薮に入って行った。みんな思わぬ出会いに感動し、それが醒めるまもなく少し先で道路の溝に小さな黒いコブが見えた。シロアゴヨタカの幼鳥であった。じっくりと見てみると、さすが夜行性だけあって眼が異状と思えるほど大きく、ライトの明かりを吸い込んでしまうようであった。
 21時30分にチェックインを済ませ、クアラルンプール空港内の中華レストランでチン・ホックさんを含めた最後の夕食。そのあと飛行機への搭乗まであまり時間が取れなかったが、そこそこ簡単なみやげ物を買い込み、関東組はマレーシア航空MH088便で成田へ、関西組はマレーシア航空MH052便で関空へと、それぞれ帰国の途についた。

 ( 以下、マレーシア探鳥記 (6)に続く )

カテゴリー: 動物, 思い出, 旅行, 日々つぶやき, 自然, 遊ぶ, 飲む、食べる, パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA